それは神聖なる狂気であった

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  そんな二人を見てそういえばとふと思い出す。 「ねえ、知ってる?」僕はまだブツブツ言ってた英君の耳元に唇を近付けてわざと声を低く低くしてそう囁いてみせた。それだけで彼は途端に熟れたリンゴみたいに顔を真っ赤にして、ただただ左右に首を振る。 真っ赤な英君の鼻の頭にはよく見たら葉っぱがついていて、なんだかそれがひどく可愛くて可笑しくて、ひっそりと笑うと英君は自分が笑われてると思ったのか僕のお腹あたりを控えめに肘で小突いた。 「ひどいな、いたいよ。」 「美慎が悪いんだろ。」 「それでも小突くなんて、」さして痛くなんてなかったけど非難めいた調子で言えば英君はすぐに眉を八の字にして「ごめん」と謝ってしまう。 別に君が悪いわけじゃない、本当にひどくてずるいのは僕なのに。英君は意外と僕に甘いのだ。 「知ってるって、」 「うん?」 「知ってるって、何が?」 「ああ。あのね、恋愛っていうのは神聖なる狂気なんだって。」 英君はきょとんとしてからバツが悪そうな顔で「そうか。」と言っただけだった。 僕は知っていた、英君が僕のことをそういう意味で好きなんだと。しかも彼がそのことに対して罪悪感さえ持っていることを。  
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