チョコレート

6/20
前へ
/20ページ
次へ
連続殺人犯・山田 剛・午前2時12分。 まさか、時効成立22時間前にコンビニ強盗に遭遇するなんて、露とも思わなかった。 これはまずい、見事に姿を消し、もう捜査すらされていないと言っても、顔を知っている警官が来たらまずい… もし、この中の誰かが、奴の隙をついて通報したら?もし、奴がこのまま金を奪って逃走したら、結局は通報されてしまう。 そうなれば‥俺は窮地に立たされる。コンビニ強盗の被害者という立場上、警官と顔合わせするのは明白だ。 残された道は2つ。通報される前に逃げるか、それか22時間過ごしきるかだ。 こうなったら、やはりこの手しかない。 俺は両手を奴に向けながら、少しずつ近づいた。 「待て!ちょっと待ってくれ、頼む‥話しを聞いてくれ」 銃口が俺に向いている。 奴は殺気立った様子はない…何故か奴はいたって平然な様子だった‥ 「なんだ?くだらないことを言ったら撃ち殺す。」 「分かってる、少し耳貸せ‥」 俺はそっと、奴の耳に囁いた。 「俺は連続殺人犯、山田剛だ。嘘じゃない、信じてくれ」 賭けだった。この作戦は、危険すぎる賭け、もし負けたら人生が終わる。 心臓の高鳴りにかき消されるかのような小声で、奴は言った。 「そうか、どこか見覚えがあるかと思ったら‥やはりただ者じゃ無かった。それで、その連続殺人犯がなんの用だ?」 「俺は後22時間で時効だ。つまり俺もお前も、今通報されたらヤバいってことだ。分かるだろ?」 結果的にその賭けは、大失敗に終わるのである。 「悪いな‥俺を待ってる家族がいるんだ、金はいますぐ持って行く。」 「そうか、残念だ!」 俺は奴の手を取り、後ろへ捻った。 「何するんだよ!?分かった、分かったよ!」 すると銃は簡単に地面に落ち、俺はそれを広い上げた。 周りからは、客の歓声が聞こえた。 俺は笑いながら叫んだ。 「ははは…おまえら、何も分かってないな‥今からおまえらは俺のいいなりになってもらう!まずは携帯を出しやがれ!」 歓喜に満ち溢れた客や店員は、再び恐怖に支配されたのだった。 しかし、まだ3人は気づいていなかったのだ。 とっくに通報されていることに…
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加