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「あっそ」
コイツがなんでもないって言うから無理に聞こうとはせず、ベンチに腰を下ろす。
その隣で悠は急いで立ち上がり、鞄を手に取っていた。
「帰んの?」
「えっ?」
「隣、座れば?」
「あっ、いや、でも…」
「いいから」
「…はい…」
立ち上がったコイツを見て気づいた。
ジャージの汚れ方が異常で、いつもふわふわしている栗色の髪には草が付き、グシャグシャに乱れている。
肌が白い悠の顔は何ヵ所か赤くなっていた。
そしてさっきからずっとジャージの裾を強く掴んで微かに震えている。
それを見て泣いている理由が大体把握できたからこそ、すぐ帰らせるわけにはいかなかった。
一人になったら絶対、ついさっきの出来事を思い出す。
悠は俺から離れた所に静かに座り、ずっと俯いている。
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