虹の鳥

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    おねぇさんは走っていきます。明るい街に似合った明るい顔で、  暗くてもよく見える目を持っていないぼくにはわからないけれど、きっとそんな顔をしているに違いないと思いました。 「鳥さんありがとう。」  ぼくのほうをすこし見ておねぇさんは言いました。  でも、そのときにすごい音が聞こえました。何かがぶつかる音が聞こえました。ぼくは目はよくないけれど耳はいいのです。  おねぇさんの叫び声が聞こえました。  そして、おねぇさんは車にぶつかって消えてしまいました。  次におねぇさんに会ったのは病院でした。  おねぇさんにはたくさんの機械につながれて、たくさんの白い人に囲まれていました。  白い人たちは言います。もうおねぇさんの足が動くことはない。  おねぇさんは目を覚ましません。ぼくが呼んでも動きません。  ぼくは悲しくなりました、せっかくおねぇさんは幸せになれるところだったのに、おねぇさんはもう自分で歩くことはできません。  ぼくがおなじだったとして、ぼくの翼がもう動かなくなったらそれは不幸せだと思うからです。  そうして初めておねぇさんに会った暑い日から、しばらくしておねぇさんは目を覚ましました。  ぼくはすぐに機械に繋がれたままのおねぇさんに話しかけます。 「おねぇさんは……もう歩くことはできないよ。おねぇさんは不幸せになってしまったの?」  おねぇさんは答えます。 「人は歩くことができる方が便利よ。でも、幸せとは関係ないわ。」 「でも、ぼくならこの翼がなかったら生きていけないよ」 「鳥さんならそうかもね。でも人は違うわ。歩くことができても不幸せな人はいっぱいいるし、歩くことができなくても幸せな人は大勢いるわ。」 「歩けることは幸せを少し豊かにできるだけよ。」  そういっておねぇさんはまた眠ってしまいました。  ぼくの目が夜でもよくみえる目だったらおねぇさんに「車が来てるからあぶないよ」って言えたのに。  でもしかたない、ぼくはよく見える目の代わりに願いをかなえる翼を選んだのだから。
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