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紅葉のような赤い空をぼくは飛んでいます。
山も同じ色でぼくはどこまでも飛んで行けそうです。
下界では多くのおじさんが忙しそうに仕事をしています。
書類を持ってあっちへ、誰かと話をしてこっちへ。
パソコンを使ったり、立ったり座ったり。
そのなかの一人のおじさんに話しかけてみます。おじさんだけはすごくつまらなそうにしていたからです。
「おじさんは今楽しい?」
ぼくは聞きます。
「楽しくはないよ。」
「なぜ楽しくないことをするの?」
「鳥君だって空を飛ぶだろ? 空を飛んで何かを食べるのと同じさ。」
「ぼくは空を飛ぶと楽しいよ。」
「きみはそうかもね、でも君の友達でも飛ぶのが嫌いな鳥や、苦手な鳥がきっといるだろ? 人間だって同じさ、仕事が好きな人も苦手な人もいるのさ。」
ぼくはそうかもしれないと思いました。だからおじさんに聞きました。
「どうすればおじさんは楽しくなるの?」
「そうだな……」
おじさんは考えます。
「おじさんはもっと地位があればもっと楽しいと思うよ。自分の好きな仕事ができて、もっと君みたいに自由になれたらもっと楽しいだろうね。」
「ならおじさんの思った通りにしよう。それは、誰もが知るような大人物に、」
おじさんのスーツは誰もが認めるような素晴らしいものに変わり、誰もがおじさんに一目置くようになりました。
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