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「それじゃあ……」
男の子はぼくを見て考えます。
すごくすごく考えます。
「じゃあ、僕は願う。どうか鳥さんが前のような美しいきれいな鳥になれますように。」
ぼくは驚いてしまいました。
「本当にそのお願いでいいの? ぼくは何でもできるんだ。蛇口からチョコレートが出るようにもできるし、鉛筆をキャンディーにすることもできるんだ。君は本当にそんなお願いでいいのかい?」
ぼくが聞くと男の子は答えます。
「構わないさ、今日はクリスマス、サンタさんが僕の願いをかなえてくれるからね。」
「ぼくは君を幸せにしたいんだ、君の願いをきかせておくれよ。」
「僕の願いは鳥さんの幸せさ、今までいろんな人の願いをかなえてきたやさしい鳥さんがこんなにみすぼらしい姿でいることが僕にとっての不幸せなのさ。」
すると、ぼくの最後の羽がぬけ落ちて新しい羽が生えてきました。最後に残った紫色の羽と同じ色の羽根が全身を覆います。
でも、ぼくが七色の鳥だった名残でところどころは色鮮やかな羽がはえています。
男の子の願いはかなえられました、そしてぼくに向かって何かを言います。
「鳥さんはもう、願いをかなえる鳥ではない。だからこれからは『鳥』なんかじゃなくてもっと他に名前がいるんだ。」
「そういうものなの? ぼくは生まれてからずっと『鳥』だった。自分ではそれを不思議に思った事さえないよ。」
ぼくには名前がなんなのかさえ分かりません。
「じゃあ、僕が決めてあげよう。君はクジャクだ。」
ぼくはもう七色の鳥ではなくなりました。
ぼくには夜よく見える目も、飛ぶための羽も、涙も、願いをかなえる力もありません。
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