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千夏は上尾の目の前でドアを閉める。しばらく時間が立ち、神尾が下に降りていく音が聞こえてきた。
悔しい、その言葉に限る。
何が悔しいのか、たぶん、全てにおいてだ。母親のことも父親のことも。
千夏はパジャマ姿のままヘタリと座り、自身を強く抱きしめた。
「なんだ千夏、また泣いているのか」
「だって、みーちゃんがいなくなっちゃったんだもん」
私がそう言うと、父はわたしの頭を撫でながら「しょうがないな千夏は」と苦笑を漏らした。
みーちゃんとはその当時飼っていた猫だ。
小さい頃、よくその猫と戯れていた。兄妹もいなかった私にとって父と母意外に唯一私を理解してくれる猫だった。
「大丈夫、きっとみーは千夏のために綺麗な花を取りに行ってるんだよ」
「お花?」
「そうだ、千夏は好きか?」
「うん、好き」
私の頭を撫で続けながら、父親は笑った。それはヒマワリのように明るい。
そう大好きだった何もかも・・・・
「ニャー」
「あっみーちゃん!」
私はかけていき、猫を抱き上げる。猫はめんどくさそうに
あくびをした。
「ニャー」
ハッとして顔をあげた。どうやら寝ていたらしい。
慌てて周りを見渡す。
どこから入ってきたのか、そこには猫がいた。みーの子供であるマロだ。
ちなみにみーは父が事故で死んだ後、追うように屋根裏で死んでいた。
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