†1 夢捜査官マリア

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 立花昴(タチバナスバル)は瞼(マブタ)を大きく開いた。見えてくるものが瞼を開く前と後で全く変わらず、どちらも闇一色である。  次に、昴は耳に全神経を集中したが、何も聞こえてこない。  昴は両手のこぶしをぴったりと揃えてひざにのせ、背筋を伸ばして硬いものに腰掛けている。座り心地は最悪で、腰から尻にかけて痛みを感じている。  たとえ立ち上がろうとしても、周囲のものを手探りしようとしても、昴の手足の自由は一切きかない。  さらに、自由がきかないのは手足に限らない。昴は首を振ることも口を開けることもできない。あらゆる動作が出来ないのである。  それでも、昴は鼻呼吸をすることが難無く出来ている。息を思いっきり吸い込むと、湿った木の匂いがした。 
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