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部屋の一番奥から、重い金属がこすれ合う音が鳴り響いた。扉が開かれた音である。
すると、誰かのヒールが軽快に木床を叩いていく。ヒールにかかる重みで、古びた木床はきしんでいく。誰かが昴に近づいている。
足音が大きくなるにつれて、ほのかなバラの香りが周囲に広がっていった。
暗闇から人影が徐々に浮かび上がってくる。その人影は羽根つき帽子とスカートを身につけている。
そして、昴の前で立ち止まったのは、端正な顔立ちで色白な女性であった。彼女は暗闇に完全に同化する色の衣装を全身にまとっている。
彼女は昴にゆっくりと頭を下げた。
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