8人が本棚に入れています
本棚に追加
「…うぁ!」
動揺を隠しきれず、制服を持ったままの手で必死にジェスチャーをする。
「ご、ごめんなさい。あの、今のは無意識で!なんか恥ずかしかったからとっさに…。って、今のほうが恥ずかしいんだけど…。」
あきらかにおかしい日本語を使いながら、一気にまくしたてる。
「ふっ…。」
笑い声が聞こえて、結衣は声のしたほうへ目を向けた。
「その分なら、もう大丈夫だな。」
初めて見た彼の笑顔は、頭を撫でてくれた手と同じように温かくて。
しばらくの間、目が離せなかった。
"トクン、トクン…。"
【なに、私ドキドキしてるんだろう…?】
「桜…?」
「あ…ご、ごめん。」
名前を呼ばれて我に返ったが、ふとそこで、あることに気がつく。
「……あれ?なんで私の名前…?」
【私、この人に名前教えてないよね?】
「…。」
一瞬彼の表情が固まった、気がした。
最初のコメントを投稿しよう!