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ふたりの間を窓からの風が通り抜け、結衣は少し名残惜しい気持ちになる。
「…悪い……。」
あまりにも近くで聞こえる彼女の声。
そこで初めて自分の置かれている状況に気づいた。
今まで誰にも見せたことのない
無意識の行動ゆえに、少し戸惑う。
照れ隠しのつもりなのか、口元を手で覆いながらうつむく。
「…つうか、あんな顔されたら誰だって……。」
「え…?」
小さな声で呟かれた言葉は、彼の中だけでとどまった。
「いや、なんでもない。」
さっきのことがあったからなのか、少し緊張した空気が流れる。
沈黙を破ったのは、悠斗だった。
「そろそろ入学式始まるから。…ほら。」
再び触れる彼の体温。
きゅっと握られた手は、やっぱり心地良い。
「…うん。」
正直恥ずかしい気持ちはあったけれど
今は離したくない、このままでいたいって気持ちのほうが大きくて。
彼女は繋いだ手を、きゅっと握り返した。
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