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「ところで楓さん、どうして瑠璃峰さんのことを?」
「それは、瑠璃峰さんが私の隣の部屋に引っ越してきまして」
「?」
怪訝というか、純粋に言葉の意味がわからないといった顔。
「信じられない、というかほとんど冗談みたいな話ではあるんですけど、事実なんです」
「……」
少しの間考え込むように、顎に手を当てて黙っていた文矢さんだったけど、
「ふむ」
と一言それだけ呟いて、私に目を向けた。
「ともあれ状況は把握しました。どういった経緯で瑠璃峰さんがこの大学に編入してきたのか、雛森さんの隣室に越してきたのかはわかりかねますが、概ね理解はできました」
経緯というか、思惑といえるものが働いている気がするけど、そんなことは文矢さんにだって察しがついているだろう。
「たまたまで、偶然で、運命だったらしいですよ」
人前では珍しく、私はそんな皮肉めいたことを口にして、作り笑いを浮かべた。
どうやら、杏奈は余計なことは言っていないみたいだ。
それだけが気がかりで、どうしても確認しておきたかった。
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