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「んー……」
私は大きく伸びをして、深呼吸をする。
風薫る五月のはじめ。午後2時を少し回ったところ。
初夏の陽気が気持ちいいこんな日には、お弁当を持ってピクニックにでも行きたくなってしまう。
でもお弁当はできれば誰かに作って来てもらいたいな、なんて。私の手作り弁当の残念さは、折り紙つきで保証されている。
「今日はバイトのシフトも入ってないし、講義の課題もない。ゆっくり休めるなんて久しぶり」
しかも午後の講義が休講で、こんな早くに帰れるなんて。
これは日頃の行いが良い私へのご褒美だな、きっと。
今は学食でお昼をすませて、大学から家に帰る途中。
せっかくだからこのまま少し足をのばして買い物に行こうかな。
「ねえ、道を聞いてもいいかしら?」
透き通った瑞々しい声。
振り向くと、いつの間にいたのってくらい目の前に、やんわりとほほ笑む女性が立っていた。
「突然ごめんなさい、道に迷ってしまったの」
うわぁ……。
「あの、道を……」
きれい……。
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