1.桜は散り、風薫る

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「んー……」 私は大きく伸びをして、深呼吸をする。 風薫る五月のはじめ。午後2時を少し回ったところ。 初夏の陽気が気持ちいいこんな日には、お弁当を持ってピクニックにでも行きたくなってしまう。 でもお弁当はできれば誰かに作って来てもらいたいな、なんて。私の手作り弁当の残念さは、折り紙つきで保証されている。 「今日はバイトのシフトも入ってないし、講義の課題もない。ゆっくり休めるなんて久しぶり」 しかも午後の講義が休講で、こんな早くに帰れるなんて。 これは日頃の行いが良い私へのご褒美だな、きっと。 今は学食でお昼をすませて、大学から家に帰る途中。 せっかくだからこのまま少し足をのばして買い物に行こうかな。 「ねえ、道を聞いてもいいかしら?」 透き通った瑞々しい声。 振り向くと、いつの間にいたのってくらい目の前に、やんわりとほほ笑む女性が立っていた。 「突然ごめんなさい、道に迷ってしまったの」 うわぁ……。 「あの、道を……」 きれい……。
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