プロローグ

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  天気快晴  気温21℃  菊上(キクノウエ)町菊上学園中校門前  四月初旬にしては暑苦しい気温、天気に恵まれる事のできた入学式当日。校門の脇に植えてある桜の木は無事に小さいが蕾をつけていた。中には今日の日を祝福しているように花をつけているのもある。そして新入生の生徒、在校生の生徒が、その桜のアーチをくぐりながら校門を通っていく。  こんなどこにでもありうる入学式の一コマ。だがその風景にどうしても馴染めない部分がある。  「春(ハジメ)ちゃんの馬鹿っ !! 入学式に遅れちゃうじゃんか !! 」  親子連れでやってくる生徒の中を、新品の菊上中の制服を着て逆走する少女が一人。  菊上中新入生。栗原茜(クリハラアカネ)。茶色の髪を横に束ね、前髪を綺麗に切り揃えている。今でいう『パッツン』だ。目が人形のように大きく、顔が極端に小さい。色白で頬が桃色に染まっている。身長も極端に高く、足も長い。まさにモデル体型。  他から見れば確実にモテる。だが、顔と違い性格がそうでないのだ。  「調子に乗ってんじゃねぇよ。あんの糞あまめっっ !! 入学式に遅れたらどうすんだぁぁ !! 」  このように、暴言吐きまくりだ。周りにいた人達も離れていく。だが、そんな事を気にする彼女ではない。むしろもっと酷いことをぼやいている。その時。  ドンッ !!  茜の肩と誰かの肩がぶつかった。顔を上げると美少年がそこにいた。読者の皆様は「なんてベタな展開なんだ」なんて思っているでしょう。しかし。  「春ちゃん !! 何処にいたのさっ !! 遅れちゃうよ」  茜が少年の手を引く。だが何処か違和感がある。それは下半身を見れば分かるのだが。     少年はズボンでなく‘スカート’をはいていた。そうだ。この少年は――いや、少女なのだ。  女男ならぬ、男女。赤崎春(アカザキハジメ)。こちらも菊上中新入生である。黒髪のボブで前髪を結び後ろにもっていっている。目が切れ長で、綺麗な顔立ちをしている。それは、‘美少女’というより‘美少年’だった。しかも背も茜と同様高いので拍車をかけていた。  校門の周りにはもう生徒がほどんどおらず、皆校舎に入っているようだった。桜の木の下置いておいた鞄を持ち、片方の手で春の手をひき、校舎に入る。幸い二人は同じクラスだったようだ。  入学式が始まり校長先生の長ったらしい話を聞き流す。これからの中学校生活が楽しくなると願いながら。
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