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ふぅ……っと栗原が溜め息を漏らし椅子に座ったまま伸びをする。そして行っていた作業を再び始める。
先程から栗原達が作業をしているのは体育祭の装飾である。体育祭は5月に行われるので1年生は徒競走しか種目がない。その為装飾、会場作りは1年生が担当になる。
1班で造花を100個作ることになっているが空海がさぼっていたため半分も終わっていない。何の為に1日1時間学活の時間をとっているんだか。
そう――私、永山恵美穂は思う。
「そーらーうーみー、お前何机に突っ伏してんだぁー。お前班長だろー ? 班員の事も考えろー。それに体育祭は明後日だぞ。明日会場準備するんだから半分くらいは作り終えろ」
そういい残すと教室を後にし、学年主任に帰宅の許可を得に行く。
――……何故この子達の為に居残り残業せねばいけないのだ。
先生に就いたのが元々いけないのだが昔っからサボり症のある恵美穂はふと思いながら廊下をすたすた歩く。だが実際は心優しい訳で。
「まぁ、残ってやるか」
そして、歩いてきた道を戻っていく。
なんだかんだ言って、生徒には甘いわけだな。
――そして教室の戸に手をかけようとした時、
ガラガラ……
空海が目の前に立っていた。
「あっ先生」
空海の表情がどんどん曇ってゆく。
「あ、そのぉー、えっと、あっ !! トットイレ !! 行こうと思ってそっそれで・・・・・・」
逆にふて腐れていた恵美穂の顔が満面の笑みになっていく――
「そーらーうーみー ?? 本当にトイレかー ?? それじゃバッグは要らないよなー ?? なんで肩にかけてるんだー ?? 」
そう言い切った瞬間恵美穂は絢の肩を掴み……
「今から先生と二人っきりで残りの作ろうかぁ ?? あ、勿論先生は手伝わないからな ?? 」
ウフフと不適な笑みを溢しながら3人の生徒達を帰るように促す。3人は「先生ありがとう !! 」「空海ざまぁww」などと口々に言葉を残すと帰って行った。勿論満面の笑みで。
「先生酷いッスよ !! 俺だけなんて !! てかもっと酷いのは栗原っすよ !! 何ですかざまぁって !! ずるいって !! 」
やっぱり戻らなければ良かった。なんて今更思ったってもう遅い。だがなんだろうこの優越感。そして満足感。ただ単に私がSだからだろうか。何てふと思う。いや、やりがいを感じているからだ。この――
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