残留思念

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 全ての質問、是無意味。  これ以上は自身の疑問を増やすばかりだ、と蓮次。本の表紙を軽く小突くと踵を返しリディアへ背を向けた。 「まずは現世へと戻ってもらいますわ。案内役として一人付けさせますので、以降の行動はそちらに従ってもらえるかしら?」  蓮次の背中に言葉が投げ掛けられる。リディアは小気味よい音を指で鳴らしてみせた。部屋中に反響するそれが消える頃、代わりに鐘の豪快で厳かな音が響き渡る。  耳を劈く程の音。しかし蓮次は動じない。迷惑そうな面持ちではあるが、双眸を閉じ俯き加減にその時を待つ。  鐘の音が鳴り止む。喧騒が嘘のように静寂に包まれる。  刹那、扉を遠慮がちにノックをする音が三回。 「失礼します、マスター」  扉を開き現れたのは、銀色の艶やかな髪、蒼白の双眸、淡雪のように繊細な肌を有する少女であった。年の頃は一五~一七くらいだろうか? 蓮次よりは幼く映る容貌も、その凜とした佇まいからは不相応の落ち着きが感じられる。
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