2/3

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
もしも あなたに出会わなければ 私はきっとこの桜を見ることなどなかったでしょう 今こうして歩いている花吹雪の中 思い出すのはあなたのことばかり 二人手を取り合って残した足跡 波風に揺れる笑顔 そのどれもが今は波に消えて あの時と同じ色の砂浜 「だから約束したでしょ なのにあなたは自分のことばかり」 「もう振り向いてくれないの」二人並んで歩いた街路樹 そして私は一人歩いている きっとあの日の桜はもうあなたの中では散っているでしょう かつての二人の指輪は 遠い遠い心の中にあると 私の記憶が揺らぐ町並み 潮の香りはここにある そのどれもが今は風に飛ばされ ただ灰色の波が響く 「来年もう一度一緒に こうして今みたいに歩きましょう」 「それだけで私は――」二人手を繋いだ帰り道 「――あなたと桜を見れる」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加