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もしも あなたに出会わなければ 私はきっとこの桜を見ることなどなかったでしょう
今こうして歩いている花吹雪の中 思い出すのはあなたのことばかり
二人手を取り合って残した足跡 波風に揺れる笑顔
そのどれもが今は波に消えて あの時と同じ色の砂浜
「だから約束したでしょ なのにあなたは自分のことばかり」
「もう振り向いてくれないの」二人並んで歩いた街路樹
そして私は一人歩いている きっとあの日の桜はもうあなたの中では散っているでしょう
かつての二人の指輪は 遠い遠い心の中にあると
私の記憶が揺らぐ町並み 潮の香りはここにある
そのどれもが今は風に飛ばされ ただ灰色の波が響く
「来年もう一度一緒に こうして今みたいに歩きましょう」
「それだけで私は――」二人手を繋いだ帰り道
「――あなたと桜を見れる」
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