2544人が本棚に入れています
本棚に追加
振り向きもせず歩き出す。
「待てって!このまんまだと不味いだろ?お前の上着を貸せよ」
ぐい、と袖を引っ張り玉木は俺のブレザーを脱ぐように言った。
仕方なく脱いで後ろにいた彼女に渡す。
「渡すんじゃなく掛けてやれよ」
「ちっ」
「舌打ちすんじゃねえよ」
ふん。
上着を肩に掛けて俺がそっぽを向くと彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。
「わたし、大丈夫です。帰ります」
「だってこのまんまじゃ」
「いえ、助けていただいた上にこれ以上迷惑は掛けられませんので」
丁寧に一礼して肩に羽織った上着を俺に返して寄越した。
「え、ちょ、待って」
今にも走りだしそうな彼女の肩を掴んだのは鍵谷だ。
「レオ、おまえが止めてやれよ!」
「ち」
こういう時にどうしたらいいのかなんてわからない。
とにかく女には関わりたくない。
.
最初のコメントを投稿しよう!