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「助けてやれよ」
「………」
玉木に言われてもそれでも俺は動かなかった。
彼女が俺たちに気づいてる様子もない。
「やめてよっ!」
突然、彼女がひとりの男の腕に噛みついた。
「っ、痛てぇな!」
「暴れんなよ、押さえろ」
「見せしめに便所連れてくか」
噛みつかれた男が彼女の髪の毛をグイッと掴んで振り回す。
「次の駅で降ろそうぜ」
周りに明らかに聞こえているのに誰も彼女に助けの手を伸べる者もいない。
あくまでもそこに存在しない者として誰もが目を背けて知らぬ振りをする。
「うるせぇから、その女の口に何か詰めとけ」
「やあっ!」
彼女が叫び声を上げるけれど誰もが見て見ぬ振りをする。
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