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「……そういう、わけか」
「いいから、虎、あの女をやっちゃって」
「ああ、わかってるよ。僕に手をあげたんだから」
殴られる時に歯をくいしばることも知らないお坊っちゃんの目だけが光っていた。
「あの時はあんなに優しかったのに」
「ずっと君だけ見てたのに」
「大神なんかのどこがいい」
恨み言を絞り出すようにさくらに手を伸ばす。
「やあっ!」
近づいたその手をさくらが恐怖で叩き落とした。
「どうしても拒むんだね」
叩かれた手の甲を擦って残念だと狂気に満ちた瞳で笑んだ。
「じゃあ、もういらないよ。僕のものにならないならいらない」
どこかでほっとした瞬間に
「―――――」
そう言った。
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