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川崎真弥は逃げていた。
大粒で、風によって勢いを増した雨粒が身体を叩き付ける中、彼は必死に瓦礫を掻き分けられて出来た道を走っていた。
息は絶え絶えで走る速度もさほど速くはないが、迫る害悪を振り切ろうと必死になっている。
「待ってよ、逃げないでよ。僕らを置いて行かないで」
定まらない、老若男女に絶えず変化する声で直ぐ背後の存在が言葉を発した。しかし、真弥は言葉に耳を貸さず、只管に走る。
振り返る余裕など無い。左腕は手首から骨が露出し、右腕は肘から先が無い。両腕を使えない真弥に残された選択肢は、戦闘か逃走かの二択しかなく、その中で、真弥は『逃走』を選んだのだ。
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