1人が本棚に入れています
本棚に追加
右眼が疼く。
いや、左眼を除く身体の全てが、身体の内側で燃え盛る炎によって焼かれている。鳥谷有輝は激しい喉の渇きと体内の熱で、暗く固く閉ざされた瞼を嫌々開く。
「おはよう。早速だが、お前の名前を教えてくれ」
土砂降りのひどい雨の中、ホネのあちこち折れた透明なビニール傘を差した茶髪の男が、顔と比べて異様に白い左手に出刃包丁を握り、有輝の顔を覗き込んでいた。
男の異様に白い左手は、さながら手形の石膏像の様で、硬質な外見のそれが問題無く器用に出刃包丁を握っているという現実。有輝は疑問符で埋め尽くされた寝起きの呆けた頭を渾身の力で殴り、強引に覚醒させようとした。
最初のコメントを投稿しよう!