勉強と恋

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「今日から平家物語入りまーす。」 そう言って、教室に入ってきた藤原先生。 はぁーっ。 今日もかっこいい…。 「じゃあ、…沢田さん、読んで。」 そうやって私を呼ぶ声も、 「沢田さん?」 力強い瞳で私を見る目も、 「沢田さーん…。」 全部がかっこいい…! 「沢田。ふじが呼んでるぞ。」 前の席の野村君が、藤原先生を指差しながら言った。 「え?…あ!!えっと…。何ページ?」 「65ページだよー。しっかりしてね。」 藤原先生がそう言うと、教室でクスクスと笑いがおこった。 うぅっ…。 恥ずかしい…。 私、沢田 琴美。 放課後、国語準備室に行く事が日課の青山高校、二年生。 一年生の時から、藤原先生の事が好き。 「沢田さん、また来たの?」 呆れたように言う藤原先生。 「だってね、ここ、居心地良いもん。」 先生が居るから居心地良いんだけどね。 「来ちゃダメなの?」 もし、来ちゃダメって言われたら、ショックで立ち直れないんだけど。 「別に来ても良いけど、ここに来るなら勉強ぐらいしてね。」 ちっ…。 真面目だ。 「分かりました!」 「じゃあ、明日から勉強道具、持ってきてね。」 「先生が教えてくれるの?」 「もちろん。勉強できない人に、一人で勉強しろって言っても、無理でしょ?」 何気に酷いこと言うな。 「ありがとう、先生。」 私、先生に教えてもらえるなら、次のテスト現国90点台とる! 「次のテストで、90点台とれるように頑張ろうね!」 「え?…いや、今思った事は、たとえ?とゆうか…。」 「何を思ったか知らないけど、琴美ちゃんならいけるよ!」 藤原先生はそう言うと、顔を近づけ、私の頭を撫でた。 「ね?」 琴美ちゃんって呼ばれた嬉しさと、顔が近い恥ずかしさとが頭の中でゴチャゴチャになって、何て返事をしたら良いのか分からなかった。 けど、口は勝手に 「頑張ってみます…。」 と、言っていた。
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