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「ただいまぁーっ」
家の玄関に入るなり、倒れ込む私。
「琴美、邪魔。」
そして、私を踏む柚。
これが、私と柚と修で帰ってきた時に、する事。
でも、今日は違う。絶対、違う。
私は柚のお姉ちゃん何年もやってるもの。
「ただいまぁーっ」
玄関に入り、倒れ込む私。
「おかえりー。柚も一緒?」
リビングから問いかけるお母さん。
「一緒だよ。私、部活サボってきたから。」
そう言って、私をよけてリビングに入っていった。
「お母さん、ご飯まだ?」
「まだよ。もうちょっと待ちなさい。」
リビングから、楽しそうな笑い声が聞こえる。
のそっと立ち上がり、自分の部屋に上がって行く私に、お母さんが声をかけてきた。
「琴美これ、修君の家に届けに行ってちょうだい。」
「えーっ。柚に頼みなよ。柚は修と…」
しまった!
柚と修がつき合ってるの、内緒だった!
お父さんが知ったら、「なにぃ!修を連れてこい!」って言うもんね。
「あ、うん。行って来る。」
私はそう言って、ダッシュで自分の部屋に行き、可愛いガーリーな服に着替えて、ダッシュでリビングに戻った。
「どれを届けるの!?」
「…凄い気合いね…。」
呆気にとられるお母さん。だって、バスに乗って修の家、行くでしょ。藤原先生、いるかもしれないでしょ?
「…これ、届けて。」
「はーぃ!」
私は元気に走って玄関を飛び出した。
「柚ー?」
「どうしたの?」
「修君と琴美、つき合ってるの?」
「え?」
「あんなに気合いの入った服着て…。」
「琴美は、裏切らない。」
分かってる。
「琴美は、いいやつ。」
分かってる。
「琴美!」
修ちゃんが琴美の名前を呼ぶたび、嫌だった。
胸にドロドロしたのが流れてきて、私が黒く染まる。
そのたびに、私は血を流し、自分を探す。
私は、左手を強く握った。
「柚?」
お母さんが私の顔を覗く。
「あ、大丈夫。つき合ってないでしょ。」
私はそう言って、自分の部屋へ続く階段を上った。
「そうよねぇ…。琴美はとにかく、修君が嫌よねぇ。」
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