レイヴン成長記

アリーナ

「お、もういいのか？」

ジンに近寄ると、僕に気づいた様子でそう声をかけてきた。

「うん、FCSとライフルだけ借りるよ」

「ん？それだけでいいのか？」

「え、うん…たりない？」

「ちょっとみせてみろ」

ジンはそういって、僕が胸に抱えていたタブレットを抜き取った。

「うーむ…初心者用の機体からグレードアップするときには、ブースター周りとかラジエーター、ジェネレータも交換したほうがいいぞ」

「そうなの…？僕、あんまり機動力求めてなかったから」

「あー、まぁクレイの機体は、スナイパーライフルが主体だから分からなくもないんだが」

ジンは頭の後ろを掻きながら、アセンブリのコツを教えてくれた。

「実際に組み替えて乗ると、一番分かりやすいんだが。機動力を求めてなくても、最安価からは抜け出すべきだな。なぜなら、最低限の機能も揃ってないからだ。
試験で戦ったようなMTやヘリ相手なら十分かもしれないが、AC相手に最安価のパーツではまず勝てない。勝てないし、逃げられない。
俺は、クレイが生き残るためにも、交換しろと言いたいな。
ジェネレータとかラジエーターの選び方は、容量や最大負荷を重視するか、エネルギー効率や冷却効率を重視するかが大枠だな。
クレイの機体は、全体的にエネルギー消費が少ないし、容量はいらないだろう。効率を重視したジェネレータを採用して、機体の小回りが利くようにしたほうがいいな。
ラジエーターも、ブースターによる発熱を解消できれば今のところは十分だろう。性能がいいものほどエネルギー効率が悪いから、ちょうどいいバランスを見極めて選んだほうがいいぞ。
あとは…」

…っは！寝てた！

ジンがせっかく説明してくれていたのに、僕としたことが。

幸い僕が寝てたことには気づいていないみたい…よかった。ジンは怒ったりしないだろうけど、一生懸命教えてくれてるのに、寝てたなんて恥ずかしいよ。

「…って感じだな。それで、クレイはどうする？」

えっ…！？やばい、全然わかんない。なんの話だったんだろう。

あわわ、ジンが返事まってるよ！どうしよう！そうだ、こういうときはあれだ！

「ジンに任せるよ！」

「お、そうか。わかった、任せとけ！」