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そこには道がある。
平坦な道。
その先を見通す事は出来ないが、温かく柔らかな空気に満たされている事が感じられた。
きっとこの道を行けば、これまでのような辛酸を嘗めるような思いはしないで済むだろう。
そんな俺の気持ちを見透かしたような女神の声が、俺の背中にかけられた。
『私達は、決して棘(いばら)の道だけを用意している訳ではないのです。抜け道も……そう、楽な道も必ず用意しているのですよ。辛いなら、こちらの道を進んではどうですか?』
俺は親友に視線を投げ掛ける。
奴の表情は変わらず、ただ温かな道を示すだけだ。
そんな奴の背後には黒い道が伸びていた。
その道が険しいものである事は、すぐに感じ取る事が出来た。
それは、俺が今まで歩んできた道だから……。
俺は女神の方に振り返ると、口を開いた。
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