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「シンタの親父さんはあいつが20歳の時に事故で急に亡くなったんだ。
俺も詳しくは知らないけど、親父さんは自分で不動産関連の会社を経営しててね。
かなりやり手だったんだろうな。
沢山の資産を遺してくれたらしいよ。
だけど、そのおかげで親戚たちと相続で揉めて。
急死だったから会社の方も色々揉めちゃったみたいで、お母さんは心労で倒れた。
あいつは全部1人で背負い込んで、裁判やら何やらと走り回ることになってね。
全ての矢面に立たされて、随分すり減ってた。
親しかったはずの親戚たちも、小さい頃から自宅に出入りして可愛がってくれた会社の幹部たちも敵になっちゃったからね。
大学も続けられなくなってやめたんだ。
全てが片付いたのは最近なんだよ。
結局、親父さんが大事にしてた不動産のいくつかは手離すことになったみたいだけどね」
意外な話に言葉を失った。
いつでも穏やかで、情が深いシンタさんの内情を私は何も知らなかった。
あの人柄も恵まれた生活環境だからこそ培われたんじゃないかとまで思ってた。
「あいつは自分のことあまり話さないから、ウメが知らないのは当たり前だし、知られたくなかったかもな。
でも俺は、ウメにはあいつがただの裕福なボンボンってだけじゃないこと知っててほしいから。
ここだけの話ってことで」
ぴーすけの言葉に大きく頷いた。
シンタさんのことをきちんと知れて良かったと心から思った。
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