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「川越に比べたら2、3度気温が低いんだ。
風なんかはその気温差以上に冷たく感じるな。
やっぱ内陸県とは違うのかな?」
「そ、そうなんだ」
私は威力満点の寒風に首を竦めながら窓を閉めた。
車内の空気がすっかり入れ替わって、暖気も逃げてしまった。
それでも新鮮な空気で満たされた空間はさっきより快適で私は大きく深呼吸をする。
……空気の臭いが違う。
私が慣れ親しんだ土地とは全く違う臭いがする。
「あぁ…懐かしいな。
潮の香りだ」
ぴーすけも私と同じように大きく息を吸って言った。
潮の…。
私の考えは正しかったようだ。
ぴーすけが行こうとしているのは…。
「おぉ。変わらない眺めだな」
ハンドルを左に切ったぴーすけが歓声をあげる。
そう、私たちの行き先はここしかない。
私の正面に現れたのは、どこまでも果てしなく、大きな、海…だった。
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