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「……着いた」
小さく呟くように言って、ぴーすけはエンジンを切った。
ザザ……ザザザ……
静かになった車内に波の音が流れ込んでくる。
それは、とても優しくて落ち着く音色で、ぴーすけの声を聞いているときと同じ感覚だった。
「降りますか?」
ぴーすけに促されて、私は助手席のドアを開けた。
「寒っ…」
降りたとたんに潮風が吹き付けてきて、私は慌ててコートを着込み、ボタンも一番上までしっかり留める。
出来る限り温かい格好をしてこいと言ったぴーすけの言葉を身をもって理解した。
「ぶきゃっ?!」
海に圧倒されてボンヤリしていた私の頭に突然何かが被せられて、驚いて振り向いた。
「常々思ってるんだけど、ウメの擬音っておかしくない?
それが面白いけど」
チョコレート色のダウンコートを着たぴーすけが笑っていた。
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