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乾いた砂が降り積もった階段をゆっくり下りる。
「滑るから気を付けて」と言いながら、ぴーすけが手を引いてくれた。
「うわ…」
砂浜に足を下ろすと柔らかく沈み混む。
慣れない不安定さが新鮮だった。
「あー、ブーツ汚れちゃうな」
申し訳なさそうに頭を掻くぴーすけに首を振りながら
「大丈夫。
帰ったら磨けばいいだけだから」
「そ?」
安心したように笑顔を見せたぴーすけは、波打ち際ギリギリまで歩いていって、両手を広げて深呼吸をした。
その後ろ姿を眺めながら、私も目一杯息を吸ってみる。
身体中に冷たい潮風が染み渡るようで気持ちがいい。
間近で見る冬の海は、私が思っていたより青が濃く、太陽を反射する海面は金色の砂を撒き散らしたようにキラキラ輝いていた。
こんな寒い中でも、私たちみたいに海を見に来る人はいるらしく、砂浜や上の駐車場には所々に人影が見えた。
だけど、私たちの周りには誰もいなくて、海と二人だけが切り離された世界にいるみたいだった。
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