始まり

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その日鈴華が家に帰ると、珍しく両親が帰ってきていた。 「鈴華。ちょっと来なさい」 父に呼ばれ、鈴華は広間に入った。 「何の用?」 「何だその口の利きかたは…まぁいい。話があってな」 父はそこまで話し終えると、母に目配せをした。 そして鈴華の母は 「私達、アメリカに行かなくてはならなくなってしまったの」 と言い、 父はゴホンと咳払いをし、 「お前はどうする」 と、鈴華に己の選択を問う。 「なんだ、そんなこと?私は日本に残る。別に今までと何も変わらないじゃない」 鈴華は幼い頃から一人でいることが多かった。 裕福で何不自由ない生活の代償に、家族との安らぎの時間を持てなかったのだ。 「そうか…」 父はそれだけ言うと、母を連れ、広間を出ていった。
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