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 大学に入学する時、『今度こそは好きになった相手に告白する!』と意気込んでいたのだ。  しかし、いざ大学生活の蓋を開けてみると、何故か心踊る相手は同性だった。  最初は何かの勘違いだと思った。だが、話し掛けてもらえただけでやけに嬉しかったり、ちょっとした接触でドキドキしたり。トドメには、自分との会話に誰かが割り込んできた時に、もの凄くイラついたり。タイプだと思っていた女の子には感じなかった心情だった。  半年近く悶々と悩んだが、真っ赤に色づいたナナカマドに背中を押されるように自分の心を自覚して、思い切って告白した。  感じていた通り、佐伯は武志を軽蔑はしなかった。しかし、友達以上には思えない、とあっさり断られた。今迄通り友達でいよう、と言われ、頷く他無かった。 「やっぱりここに居た」  静かな声がして、武志の視界に整った顔が入ってきた。 「何だよ、石井。俺に構うとお前までホモだ、って言われるぜ」  そう、明日には学内中に噂が広まり、皆から白い目で見られる事は避けられないだろう。  石井は穏やかな空気を纏ったまま、武志の横に腰を下ろした。 「構わない。いや、むしろその方が良い」 「はあっ?! お前何言ってんだ!」  がばり、と起き上がり、思わず怒鳴ってしまった。  ――何言ってんだ、こいつ!――  武志の視線と石井の真剣な視線が絡んだ。 「佐伯の事、好きなのか?」  グッ、と返答に詰まってしまった。  確かに佐伯の事は好きだった。さりげないフォローの出来る器用さとか、周りを楽しませるユーモアとか。ぬーぼーとした長身も、冴えないと言ってしまえばそれまでだが、優しさの現れに思えた。  それも、先程の一件で全て吹き飛んだ。あんな大勢の前で自分の想いを暴露されるとは。そして、彼女の身代わりにされるとは。 「もう終わったこった」 「過去の事なのか?」 「終わった、って言った! 蒸し返すな! つか、俺の事なんか放っとけよ」  武志には石井の真意が全く見えてこなくて、イライラが募った。 「ごめん。俺には大事な事なんだ」  石井は一度目を伏せると、もう一度武志を見つめた。更に強い視線で。 「好きなんだ。佐伯の事なんか忘れて、俺と付き合ってくれないか」  思いもしなかった言葉に一瞬真っ白になったが、すぐにそれは怒りの赤に染められた。石井の襟首を掴んで唸った。
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