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霙混じりの風が頬を濡らしてゆく。
「空が哭き始めたな。
行朝」
「この季節は一度荒れれば翌朝まで続きます。
しかし、それほど雪は降りますまい。」
身を緋縅の大鎧に包み込んで、馬に揺られながら風に揉まれる旗を見上げた。
五百ずつ三つに分けた隊の二番手の先頭をゆく結城宗広。
その二番手の隊の真ん中に自分はいる。
陸奥は初めてだった。
今は白河を抜け谷間の道をゆく。
見上げた崖から覗く空には先より霙が増えた気さえする。
崖上からの攻撃に備え、一隊だった軍を三つに分けた。
その際、一番手の隊の先頭をゆく伊達行朝に天候を聞いたが支障はなさそうだ。
共に先頭をゆく南部師行と伊達行朝、結城宗広は陸奥の武士だ。
頼りになる。
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