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一瞬、時間が止まったように音という音が無くなった。
茜は訳が分からない様子だ。完全にパニクっている。
「最低……なんなのよそれ!期待した私が馬鹿だった!こっちはあんたの優柔不断のせいで恋なんて出来なかったのよ!?私が何人フったか分かる?…優人を信じてたのに…ふざけるなんて‥」
茜は俺の頬を叩こうとした。
しかし茜の手は俺の頬を貫通し、茜はさらにパニクった様子だった。
「嘘…なんで?なんでよ!?」
「だから、俺は」
「嫌!ふざけんな!やっと、やっと告白してくれるかと思ったのに!やっと恋が出来るかと思ったのに!!」
茜は現実で無い何かを見据えているような目で、膝を崩した。
涙がコンクリートの地面に打ちつけられている。何故だろう、何故こんな状況でも、俺は好きって言えないのだろう…何故、俺は茜を抱きしめられないのだろう。
「茜…お前やっぱり俺のこと…」
「そうよ鈍感男!私のこと好きならさっさと言いなさいよ!」
「俺も…ずっと好きだった…」
これでいいはずだった…でも、茜はさらに涙を流し、俺に殴りかかった。
「遅いよ!!遅すぎるよ……死んでからじゃ‥遅すぎるよ…」
「ごめん、俺も…もっと茜と一緒に居たかった…」
そう言った途端、俺の体は薄れ始めた。
もう…俺は死ぬのか…
茜は俺の体が薄れていくのに気づき、赤い目で消えゆく俺に叫んだ。
「‘サヨナラ,!」
その‘サヨナラ,は冷たく、悲しいものだった…
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