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「…じじ様達は何も教えてくれないのね」
結局何も言えなくなった大人達に部屋に戻るよう言われ、少女-紅葉(もみじ)は部屋へと続く廊下を歩く。
木で造られた廊下は紅葉が一歩一歩踏み出す度にギシギシと軋むような音を立てる。
だが別にそれは古びてしまっただとかの理由ではないことを紅葉は理解していた。
紅葉のような体重の軽い者が通っても足音が鳴る。そしてこの廊下の先には紅葉の自室である。
目的は侵入者を警戒してと紅葉の脱走を危惧しての事だろう。
「変なの。私がお外に出てどうなるのかしら?」
幼い頃から村の人たちは事あるごとに外へ出るなと、危険だから村から出てはいけないと紅葉に教え込んできた。
そして他に同じ年頃の子供もいなく、周りをそういう大人に囲まれた紅葉は外への興味は薄い。
中庭で監視付きではあるが池の鯉と戯れたり、偶然入り込んだ蝶々にはしゃいだこともあるが結局紅葉にとっての"世界"はそこまでのものだった。
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