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興味が無い上に大人達にそこまで言われた"危険"な所へ自ら行くほど紅葉は愚かではない。
故に、紅葉はこの現状に疑問を覚えたのだ。
(なら、何故その危険な場所から私の元へ人が来るのだろうか?)
少女を押し込めた箱庭で少女が抱えた小さな疑問。
それは少しずつ波紋のように広がりやがて複雑に様々な疑問を彼女が感じるようになった。
或いはそこからが、紅葉の自我の確立だったのかもしれない。
キュッと小さな音を最後に立ち止まると、紅葉はふと視線を横にずらした。
この廊下は外に面しておらず、見えるのはいつもと変わり映えのしない中庭の景色。
人の手により整えられた花々や木々、池。
ため息の出るような美しさだと先日、紅葉と共に池の鯉に餌をあげてくれた老婆が言っていたのだが、今の紅葉は別の意味でため息を吐きたかった。
「お嬢様、どうなされましたか?」
まだ廊下を歩いている筈の足音が急に途絶えたからか、あるいは最初から"監視"していたのか、パタパタと小走りで近付いてくるのはこの屋敷に住み込みで働いている女性だった。
「お庭を、見ていたんです」
「お庭を…ですか?」
確か彼女…名前は雪(ゆき)だった気がする…は最近になってこの屋敷にやってきたのだと、紅葉は思い出した。
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