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紅葉にとって、大体の大人は同じような言葉を紅葉に教える。
外は危険、神は偉大、紅葉は選ばれた子供。
洗脳するかのような言葉ばかりを連ねる輩が紅葉にはどうしても同じように見えてしまう。
だからか未だ紅葉は大人達の名前をよく覚えておらず、長老をじじ様と呼ぶ以外は曖昧な呼び方をしていた。
-大人達の方もそれを差ほど気にしていないらしく指摘するものが居なかったが。
しかし、雪の名前だけはかろうじて記憶に残していた。
それは雪がこの村とは違う村出身だったからだというのが主だった要因だろうが紅葉がそれを知る由もない。
要は彼女が教える事が他と違った。ただそれだけだ。
「お嬢様、お外にはですね、そこの池よりもっとずっと大きな海というのがあるんですよ」
「…う、み?」
「はい、続きはお部屋でお話しましょうか」
流石に他の人間に聴かれると自分の身が危ういという事は重々承知のようで、今のような周りに誰もいない状態でしか話してくれないし口止めをされているのだが、雪は自らが見たという様々な外の世界を紅葉に話して聞かせた。
それは外は危険だと教え込まれた紅葉にとってはとても衝撃的で、紅葉の少しずつ芽生えた疑問を膨らます促進剤のようなものだった。
「雪は強いのね、お外は危ないのに」
ポツリと呟いた言葉に、雪は哀しげにわらった。
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