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――目覚めなさい
私の小さな愛し子
私の可愛らしい…――
夢を見た気がする。
柔らかな感触に目を開ければ、自らの部屋の特徴的な木目の天井が目に入った。
どうやら雪の話を聞いているうちに自分は寝入ってしまったようだ。
僅かに眠気の残る気怠い身体を起こし、小さな欠伸をする。
雪は仕事に戻ったのだろうか。部屋には自分独りきり。
「何か、夢、見た気がする」
それはとても優しくて、自分が求めていたものだったような気がする。
…が、しかし、目覚めてからほんの僅か周りに気を向けてしまっただけでその夢の内容はすっかりと頭から離れてしまった。
「お腹、空いたなぁ…」
ふと、時計に目を向ければ夕飯の時間に近い。
もうすぐにでも夕飯を知らせに誰かが来るだろう。
もう一度、小さく欠伸をした紅葉は自ら眠っていた布団を畳む作業に取りかかり始めた。
お手伝いさんが夕飯の支度が済んだ事を告げに来た頃には、紅葉の頭からは夢の事などすっかり消え去っていた…。
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