10人が本棚に入れています
本棚に追加
「ったく、神サマってぇのはそんなんでいいのかねぇ?」
薄暗い森の一角、通常ならば誰も好んで入ることはないだろう鬱蒼とした場所を独り、ぼやきながら歩く青年がいた。
片手に両刃の剣を携え、目の前を塞ぐ触れたらすぐにでも切り傷ができそうな程に鋭く尖った草を手際良く斬り伏せながら進んでいく様は誰が見ても不機嫌そのものだ。
その苛つきで少し手元が狂ったのか…ピッ…と小さな音と共に、彼の着ている青と黒が基調の軍服のような上着に僅かな裂傷傷が出来るとただでさえ機嫌の悪かった青年の眉間に更に皺が刻まれた。
「チッ!!ったく、駄神め。後で服代も請求してやる」
そもそもの彼、アベリス・クラットラが何故こんな場所にいたかというと説明すれば長く、一言で言えばとても情けない事情があった。
「何で俺が神の溺愛する天使候補生の手伝いをせにゃいかんのだ!!」
-神曰わく、
『俺の可愛くて愛しい娘がこの村にいるから連れてきてな!!ついでに立派な天使になるまでついてろよ、傷一つでもつけたらぬっころす!!』
(…あの馬鹿神いつ死んでくれるかねぇ?)
あの神のドヤ顔を思い出す度に自分の上司運の無さを自覚してしまう。
ちなみに、神と言っているが神が一人とは限らない。
最初のコメントを投稿しよう!