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「橘、来い」
オフィスに到着した瞬間に宗吾はそう命令し、紀香を、使われていない会議室に連れ込んだ。
宗吾と対峙した紀香は不機嫌丸出しで、先に口を開いた。
「謝りませんから」
「何の事をだ?」
「武藤翔平を逮捕したことです」
「それはどうでもいい」
宗吾が紀香に向かって手を出す。
「どうでもいいって……なら何ですか、この手は」
「出せ」
何に対して言っているのかわからず、紀香が眉間にシワを寄せたが、宗吾が次に言った単語に紀香はみるみる表情を引き吊らせていった。
「高松が喋ったんですね……」
「彼女は然るべき報告をしたまでだ。悪くはない」
紀香がムッとした顔になる。
「庇うんですか?」
「嫉妬か?」
宗吾が鼻で笑い、更に紀香は目付きを悪くする。
「カードを出せ。そして翔平をここに連れてこい」
遊びは終わりだとばかりに真剣な表情で宗吾は言った。
その有無を言わせぬ空気に紀香は仕方なくポケットに仕舞っていたカードを宗吾に渡す。
「翔平を連れてきたら全員のこの件を報告しておけ」
カードを見せながら宗吾が言う。
遠回しに2人だけにしろと言っていた。
「わかりました」
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