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翔平が窓の外を見た。
正午に向かう太陽は翔平の心模様とは裏腹に光輝いている。
「話すよ、全部」
静かな宣言が、会議室内に響いた。
「ありがとう」
それから翔平は自分たちが何について調べていたのか、ミイラ化した遺体との関係など細かく話した。
「これでだいたいの犯人の目星はつくが、確実な証拠がないと逮捕できないな」
「協力するよ。こうなったら徹底的に奴らを潰してやるまでだ。潰される前に潰せってね」
笑ってはいるが、翔平の目は真剣そのものだ。
「協力には感謝するが、あんまり危ないことはするなよ?まあ、でもあの人が翔平は守るからって言っていたから大丈夫だとは思うけど」
あの人、という宗吾の表情はとても嫌そうにしている。
「あの人って?」
「決まってるだろう?母さんだよ。さっき電話があって、お前が逮捕されたってどこぞで聞き付けたみたいで俺が説教を聞くはめになったぞ」
そこに宗吾の従兄弟という以外の特別な思いがないのは分かってはいるが、小さな淡い心が揺れる。
「悪いね、宗吾」
「お前のせいじゃない。殆どは紀香だ」
「わかった、紀香にそう伝えておくよ」
「やめろ。まだ機嫌が悪いんだから」
妹のことになると形無しなところが従兄弟の可愛いと思える唯一の瞬間だった。
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