きせき の きせき

2/14
前へ
/46ページ
次へ
布団を静かにめくると、スルリとベットから抜け出した。物音を立てないように――足音を立てないように、部屋の扉を静かに開け。静かに閉じる。 朝の静寂に、軋む床の音は良く響く。静かに階段を下り、静かに居間の扉を開く。物音を立てないように、台所に立つ――これがいつもの、朝の風景。 朝の始まりは、いつも慎重かつ寡黙に。冷静であれ。端的であれ。機械であれ。何事も静寂であれ。 冷蔵庫を開けると、冷蔵庫特有の霜臭さが鼻につく。冷気の臭いだとでも言うのか。表現自体は分からないでもないが、これは毎日喰らうとなると、少々辛い。 姉を起こさぬように、ゆっくりと時間を掛けて静かに調理をする。今日は何処へ遊びに行こうか――静かに用意した弁当箱を見詰めて、そんな事を考えてみた。 キョウモ ソトハ クライ  
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加