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じいちゃんはそんな風な話を言い終えると同時に、眠りに落ちた。無理もない。冬の炬燵‐コタツ‐に勝てる者など、この世にいやしないのだから。
じいちゃんは、日頃から『魔法』とか『魔女』とか『魔法使い』とかいうファンタジーな事をよく言っている。
口癖は『魔法は万能じゃない。過信しちゃいかんぞ?』なんて、現代では何の特にもならない注意事項。
そんな変わった人だけど、時々口をモゴモゴしながら炬眠る姿は何だか幸せそうで。案外普通たった。
花咲ツクヨは二階にある自室に向かうために炬燵‐コタツ‐を出た。ちょっとだけ、名残惜しい。だけどじいちゃんの話を聞いたら、なぜか無性に月を眺めたくなった。もう十一月なのに。
ツクヨは部屋に入るなにダウンジャケットに袖を通し、ファスナーを一番上まで上げる。そしてバイク屋で買った、ウィンドブレーカーのようなズボンをジャージの上からはき、窓を開けた。
「お、今日は満月か」
ツクヨは屋根上に、そして物語の上に降り立った。
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