8004人が本棚に入れています
本棚に追加
/320ページ
両の親指で俺の目の下あたりを撫でているのがわかる。
まだ、その手つきは優しい気はする。
「やだァ?んなの俺が知ったもんじゃねェよ。俺が鬼ごっこでもかくれんぼでも勝っただろォ?ポチを見つけたし、ポチを捕まえた。ポチに似合う首輪もつけた。なァ、俺を見ろ。その瞳で見ろ。」
俺の拒否にぐりぐりと瞼をかるく押したあと
言葉を紡ぎながら、片手が首にかかる。
ふと、先程首を絞められたのを思い出し
無意識にぶるり、と体が震えた。
それでも俺は目をつぶり続けた。
鼓膜を揺らす、紅様の声や
すこし狂気じみた言葉にも
別に、嫌な気持ちにはならなかった。
この人なら、見せても...
なんて絆されかけていた時
見ろ、といいながら鼻を噛まれた。
「ぅっへッ!?」
「ヒヒッ、やっと見たァ。」
びっくりして目を開けてしまえば
自ずと紅様と目がばっちりと交差する。
もう閉じさせまいと紅様は瞼に親指をおきながら
とても無邪気に、嬉しそうに笑った。
その瞳は先程までの無機質な白ではなく
綺麗な赤色をしていた。
瞳に映る自分より
その赤に視界を奪われた。
最初のコメントを投稿しよう!