金盞花

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そんな俺をみて 二人はなんともバツの悪そうに肩を竦めて 笑みをこぼす。 なんとも暖かい時間なんだろう。 先程までのどろりとしたものが一切合切嘘のようだ。 すると不意に紅様に頬を鷲掴みされる。 「んぶっぇ!?な、なんれふか!?」 「....、やっぱりィ、すんげぇェキレイじゃんかァ。」 「......ーーーッ!!!!!」 頬を鷲掴みしたまま紅様は顔を近づけてくる。 鼻と鼻がくっつくくらいに顔が近づき お互いのまつ毛が絡みあいそうなほどまでくれば 紅様の無機質な白いカラーコンタクトの瞳に映る 自分の瞳の色に気づいてしまった。 驚きのあまり本日何度目かわからないが 紅様を突き飛ばして手で顔を覆う。 「赦してくんさい。裏側にいってしもたらおーじょーするおもてうっちゃった」 「ぁ..む、六弥ちゃん..、いや、その..」 それに今度は六弥ちゃんが俺の手に 大きな手を重ねてくる。 優しさからの行為だというのがわかってる。 わかっているけど、素直に感謝の言葉が出てこない。 それに舌打ちが聞こえたと思ったら 手で隠していた視界が開けた。 「なァ、怖いかァ?」 顔に置いていた手をはがされ 再度、今度は両手で頬を包み込まれ 六弥ちゃんから無理やり、視界を紅様のほうに顔を向けられる。 咄嗟に目をつむってしまった。 なにか、なにか言わなきゃ。 「目ェ閉じてんなよォ、俺に、俺だけにポチの全部をみせろよォ。」 「ご、ごめっ、で、でもや、やです...ッ。」 こつり、と額と額が重なる。 六弥ちゃんの静止は紅様には効いてないっぽい。 目を開いてしまったら、眼前にはきっと俺の中まで見ようとする 紅様がいるはずだ。 その瞳に映るであろう自分を見たくなくて 嫌だというと、目を閉じていてもわかる位 紅様から不機嫌オーラが伝わってくる。
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