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~団欒~
私の名前は榎本友香里、誕生日は昭和63年の11月18日、15歳。高校1年生。
父の実家から久しぶりに我が家に帰ってきて、ようやく、心の整理がついてきた。
…私が3ヶ月の間過ごした祖母の実家は、引き払ってしまうらしい。
祖母には親族は父だけだったから、祖母のお遺骨を家の近くのお寺に預ける事になった。
お寺の住職さんに挨拶した後、自宅に戻って3ヶ月分の汚れの溜まった家を掃除し、
シャワーを浴びて、その後父と2人で近くのファミレスで夕食を摂った。
「すまんな友香里…、いろいろと手伝わせて。」
父は徐に箸を止め、私にそう言った。
「気にしないでいいよ、これでもお父さんの仕事の事は理解してるつもりだから。
お父さんも仕事終わったばかりで私を迎えに来たから、
まだろくに休んでなかったんでしょう…?私に出来ることなら、何だって手伝うよ。」
「ありがとな、友香里…、お婆ちゃん、父さんの事を何か言ってたか?」
「うん…、自慢の息子だって言ってたよ。」
「本当か?お前を預けた時は“顔もろくに見せない親不孝者”だって言われたんだがなぁ。」
箸を握ったまま、父は照れ隠しなのか、恥ずかしそうに頭を掻いていた。
「お父さんに心配かけたくなかったから強がり言っただけでしょう?
あの後、お婆ちゃん嬉しそうに泣いてたよ。
後は、便りが無いのは元気の証拠だとか、夢を叶えて立派にやってるとか。
お父さんの話になると、すごく楽しそうだった。」
「…そうか。」
父は一瞬だけ、安堵したような柔らかい表情を見せた。
母に嫌われたままだったと心のどこかで思っていたのかもしれない。
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