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「さぁさぁ…、お父さんも早く食べてよ、私は明日から学校なんだから。」
祖母の事を思い出せば父がまた沈んで、空気が重くなると気まずい…。
とりあえず私は適当なことを言って、話を逸らした。
「ああ、そうだな…、明日から学校だもんな。」
父がスーツの袖に隠れた腕時計に目を落とす。
私も釣られてか、店内時計を探すと、もうすぐ22時になるところだった。
「…ふぅ、さて、出るか。」
小冷を一気に飲み干し、父が私にそう言い立ち上がる。
父はカウンターで精算をしようと、スーツの内ポケットから財布を取り出したが、
その拍子に、父の懐から何かがパサリと床に落ちた。
父が気付かなかったのようなので、私が“それ”を拾って手渡す。
「ほら…、お父さん、こんな大事な物を落としちゃ駄目でしょう?」
了
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