4人が本棚に入れています
本棚に追加
~カタギリナナコ~
6月7日、朝6時、携帯のアラームが、耳元で豪快に鳴り響く。
毎晩自分で置いてるんだけど、毎朝必ず後悔する…。
耳を擦りながら階段を下り、キッチンで2人分のお弁当を作る。
毎日やっていた事なのに、3ヶ月ぶりともなると流石に何だかだるい。
簡素なものになってしまったが…、まぁ父には我慢してもらおう。
お弁当が出来上がり、7時になってようやく父が起きてきた。
「あ…、お父さん、おはよう。」
父は、“ん~”と唸りながらソファーの上の新聞を手に取り、食卓に着く。
2人で朝食を済ませ、いつものように父が先に家を出た。
「…じゃあ、行ってくる、学校、遅れるなよ。」
「はいはい、いってらっしゃい。」
父を見送った後、私は自室に戻って制服に着替える。
考えてみれば、夏休みより長く休んでたから、この制服にも懐かしさを感じる。
着替え終わって部屋を出ようとした時、携帯が鳴った。
「…もしもし、友香里?」
「おはよう奈々子、久しぶり~!」
電話の相手は学校の友人…、“片桐奈々子”だった。
「“久しぶり~!!”じゃないでしょ!!何で連絡くらい寄越さないかなぁ!?」
「ごめんごめん、こっちも大変でさ…。」
「本当にもう…、今日から学校来るんでしょう?」
「うん、今準備してるとこだよ。」
「じゃあ、いつものトコで待ってるから、遅れたら弁当没収!!」
「はいはい…、じゃあまた後でね?」
…久しぶりに友人の声を聞いて、私はちょっと嬉しくなった。
奈々子は小学校からの付き合いで、私の1番の親友だ。
毎朝一緒に登校し、お昼休みに一緒にお弁当を食べ、必ず一緒に下校する。
「行ってきま~す。」
誰もいなくなった家に、私はそう言って奈々子との待ち合わせ場所に急ぐ。
「友香里~!!おはよ~!!」
遠くから奈々子の声が聞こえてきた…、何で奈々子の方が遅れるかな?
「ごめん友香里~!!待った?」
「いつもの事でしょ?さぁ、急ごう?」
いつもと変わらない朝、変わらない町並み、変わらない日常。
今日もいつもと何も変わらない、この時まではまだ、何も…。
了
最初のコメントを投稿しよう!