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私だって、初めは『普通の子』だったんだと思う。
放課後になれば友達と遊んで、土日は一日中近所の公園を走り回って……毎日毎日がとても楽しかった。
あの頃はちゃんと、心のそこから笑えてた。 笑えてたの。
──それが変わった日は、今でも鮮明に思い出すことが出来る。
あれは小学校四年生の頃、合唱部に小さな頃からの幼なじみと入っていた私は、その日県のコンクールに行った。
結果は二位。 良いか悪いかと言えば良い成績だけど、それでもどこか腑に落ちない、そんな曖昧な順位に涙しながら私達は学校の校庭で解散した。
その後、私はいつも通り一緒に帰ろうと──今となっては名前も忘れてしまったが──二人の幼なじみを探した。
本当に私は、二人のことが大好きだったのだ。 だって小学校に入る前からの親友だとずっと言い合ってたから、私ももちろん二人とはずっと親友なんだと思ってた。
──信じて、疑いもしなかったの。
だけど帰り道も残り半分にさしかかった頃、話しを振られた。
「みかんってさ、キモいよね」
「……え?」
「そうそうキモいキモい」
初めは意味が分からなかった。 それ以前に私の事だなんて分からなかった。
だって、私の名前は『実花』だ。 『みかん』じゃない。
それに二人ともみかんが嫌いだった覚えもない。 その証拠に、お正月には私の家で仲良くみかんを食べてたもん。
だから、話しについて行けない私は、ただ黙って二人の会話を聞いていた。
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