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知美の家は、清香の自宅前の緩やかな勾配の小道を五百メートルほど下がったところにある。
電信柱や、道沿いの軒先に飾られた植木鉢などに遮られ、この界隈では珍しいアメリカンカントリー調の家の外観は確認できないが、清香はそちらの方を眺めていた。
知美を家の前まで見送った時、ふと思いついたように、「今夜、家に泊まりにいくね」と知美は言った。
こちらの都合や伺いを立てるよなことを、知美はしない。
一切が自分の、その時の気分である。
しかしそんな知美と清香の関係は、ご近所同士ということもあり、幼稚園以前まで遡るので、知美の身勝手に見える言動も、清香には慣れたもので、さして気にとめることもない。
慣れたものだった。
しかし今日だけは別である。
数日前から原因不明の倦怠感に悩まされ、睡魔が止まらない。
そして眠ると必ず不思議な夢を見る。
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